研究課題
特定領域研究
トリ(2-ヒドロキシフェニル)メタンH_3[O_3]は古くから知られる化合物であるが、これまでに金属錯体の配位子として用いた例は極めて限られている。配位子[O_3]^<3->は次に挙げる3つの配位形態で金属に結合する興味深い化合物である。例えば、配位子のメチン架橋部位の水素原子の方向により、synおよびanti構造が考えられる。特にsyn構造ではメチン水素が金属近傍に存在し、agostic相互作用が強制的に形成される。一方、[O_3]配位子が反応活性な金属に配位した場合、メチン部位で容易にC-H活性化がおこり、新しい4座配位子[O_3C]^<4->が生成する。Ti(NEt_4)_4とH_3[O_3]を反応させるとsyn型構造をもつ[syn-O_3]Ti(NEt_2)が得られる。錯体[syn-O_3]Ti(NEt_2)の溶液を加熱するとsyn型構造からanti型構造の異性化反応が進行し、[anti-O_3]Ti(NEt_2)を生成する。synおよびanti型アミド錯体[O_3]Ti(NEt_2)とCiSiMe_3の反応からは、共にanti型異性体である[anti-O_3]TiClが得られた。このクロリド錯体のアルキル化反応ではanti型構造は保持され、[anti-O_3]TiR (R=Me,CH_2Ph)を生成する。一方、Zr(CH_2Ph)_4とH_3[O_3]の反応では[syn-O_3]Zr(CH_2Ph)(thf)_2と[O_3C]Zr(thf)_3の混合物を与える。sun型ベンジル錯体は容易に配位子のC-H活性化反応を起こし、[O_3C]Zr(thf)_3を生成する。興味深いことに、anti型構造をもつチタン錯体[anti-O_3]TiRは安定であり、ジルコニウム錯体で観測された分子内メタル化反応を起こさない。
すべて 2005
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