研究概要 |
山中は,シリコンクラスレート超伝導体Ba_8Si_<46>を超高圧で処理し,さらにSiリッチなBaSi6に構造転移することを明らかにした。La-Si2元系では,新たに高圧相LaSi_5の合成に成功し,Siからなるポリアセン擬1次元鎖を含み,Tc=11Kの超伝導体となることを明らかにした。MgB_2と同形のBaAlSiは超伝導を示さないが,Siが僅かに過剰なBaAl_<0.95>Si_<1.05>はTc=3Kの超伝導体となることを見いだした。 藤は、ZrNC10.7の塩素核のNMR測定に成功し、核磁気縦緩和率1/T1の測定をおこなった。常伝導状態では、1/T_1T=10^<-4>1/sKと通常のメタル状態に於いて観測される値より1桁以上小さな値をとることが明らかとなった。このことは、塩素サイトの部分状態密度が小さいことを示す。超伝導転移温度以下では、1/T1はHebel-Slighter peakや指数関数的な温度依存性を示さず、8K付近に磁束格子の運動に起因する緩和率の極大を示す。これらより、この物質の2次元的超伝導特性を明らかにした。 浴野は,STM/STSによりMgB_2やCaAlSiの局所電子状態の測定を行なっているが,さらに詳しく調べるため,表面観測にとって最も重要なパラメーターである仕事関数の空間分布の測定を開始した.基準物質であるBi_2Sr_2CaCu_2O_<8+y>について,この物質の仕事関数は,原子格子点の直上で大きい,BiO面変調構造の欠損部分で低く中腹部で高い,超伝導ギャップ分布との相関は弱い,など数々の新事実を見いだした. 犬丸は,CrNは反強磁性体でありT_N~270Kでmonoclinicな格子歪みを生じる.MgO(001)上に成長したCrN(001)薄膜では,バルクのT_N近傍で構造転移がみられるが,Al_2O_3面上のCrN(111)薄膜は構造転移を起こさなかった.つまりミスマッチが大きく格子が緩和した薄膜でも基板の効果で構造転移の有無を制御できた.CrN(111)薄膜の電気伝導にも異常が現れず,この膜は常磁性を保っていると推定された.
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