研究課題
特定領域研究
本研究では原始惑星系円盤におけるダストの沈殿、成長、およびそれに伴う円盤構造(温度・密度・化学組成分布)の変化を数値計算で調べる。今年度はまずX線による円盤の構造変化やイオン化率を調べた。X線は10AU以内では主要な加熱源となりうるが、遠方では紫外線による加熱の方が効くことが分かった。次にモデル円盤における水素分子の励起状態と輝線強度を調べた。その結果、中心星からの紫外線がある程度強い場合は水素輝線強度比が円盤内の微小ダスト存在最の指標となることを明らかにした。円盤の一酸化炭素分子輝線観測においては、輝線強度比から求めた温度が一酸化炭素の昇華温度よりも低い場合があることが指摘されている。我々は円盤モデルの鉛直温度勾配に注目し、乱流拡散によって観測可能な量の一酸化炭素が凍結前に低温領域に運ばれること、一酸化炭素輝線強度比から得られる温度が円盤内のダストサイズ分布に依存することを示した。惑星は固体物質の集積により形成されるため、円盤内の氷の存在量は惑星系形成に大きな影響を与える。本研究では円盤内での氷境界(水が固体として存在する領域の境界)を求めるため、円盤の輻射輸送計算コードの開発を行った。この計算では円盤を局所的には鉛直方向の1次元平行平板とし、それが動径方向に並んでいるという近似を用いた。この近似により円盤内温度を精度良く求めることが出来る。今年度の研究では、円盤が光学的に厚い時は氷境界が中心星の近く(約0.7AU)に位置し,光学的に薄くなると2.7AU程度まで後退することがわかった。氷境界位置の時間変化は多くの要因に依存するため、今後さらに研究を進める必要がある。また円盤内の固体物質の進化に関しても研究を行つた。特に衝撃波によるダスト粒子への加熱現象に若目し、ダスト粒子の変化を理論的に調べ、幅射輸送を通した天文学的な観測可能性も検討した。
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