研究概要 |
本研究では、EuOやEuSよりも高い光磁気効果が期待されるEuSeナノ粒子の検討を行なった。 EuSeナノ粒子の原料となるEu(III)錯体は、セレンを含む有機配位子Se_2P(Ph)_2の誘導体とEu(III)イオンとの錯化反応により合成した。このEu(III)錯体に関して、構造が異なる2種類の錯体を原料としてそれぞれEuSeナノ結晶の合成検討を行った。具体的には、各Eu錯体をHDA(Hexadecylamine)中300℃で24時間熱還元反応を行い、反応終了後に粒子を遠沈させることで紫色の固体粉末を得た。紫色粉末固体の同定は、透過型電子顕微鏡測定(TEM)およびX線粉体解析(XRD)を用いて行った。 得られた紫色粉体を含むPMMA薄膜をガラス基板上に作製し、ファラデー測定により光磁気特性の評価を行なった。比較サンプルとして、従来の合成法によって得られたEuSナノ粒子を含むPMMAも同時に調製を行なった。 紫色粉体のXRD測定から2θ=25.1^0,28.6^0,41.0^0,48.8^0,59.8^0および67.6^0に回折ピークが観測され、これらのピークはEuSeの(111),(200),(220),(311),(400)および(420)に相当することがわかった。さらに、TEM測定を行ったところ、原料であるEu(III)錯体の化学構造に違いにより、異なった形状(球状および立方体型)を有するEuSeナノ結晶がえられることがわかった。 このナノ粒子を含むポリマー薄膜のファラデー効果測定を行ったところ、以前に報告したEuOやEuSナノ粒子よりも高い値を示すことが明らかとなった。そのベルデ定数は約0.2deg/cm Oe(600nm)であり、一般に可視光型光アイソレーターとして使用されている希薄磁性半導体「Cd_<1-x>Mn_xTe」と同程度(0.4deg/cm Oe at 600nm)の性能を示すことが明らかとなった
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