本研究の目的は、物質の究極の理論が持つ対称性(超対称性)を伴う場の理論を、無限大の量を一切持たない明確な形式で構成するとともに、その結果から素粒子の対称性について研究することを目差したものである。以下三つの研究目標とその研究実績について述べる。 1 格子フェルミオンの対称性の基礎研究 スタッガードフェルミオンが持つフレーバー(ティスト)の自由度が格子理論の構成方法の特徴であるが、スピノールとティストの自由度をあわせたSO(2D)のクリフォード代数で、表現できることを発見した。ここで、Dは時空間の次元数である。また、この部分代数を使って、スタッガードフェルミオンの回転対称性やパリティなどの時空離散対称性も明らかにした。さらに超対称性の場合には、ゲージ場の超対称パートナーであるマヨラナ表現のフェルミオンを扱うことが重要であるが、その場合のアノーマリィの起源を基本的な形で求め、ライプニッツ則との関係で行列による超対称性を表現するのにも適用可能であることを確認した。 2 格子フェルミオンの対称性とニュートリノの世代間が持つ離散対称性の関連付け 従来思っても見なかった組み合わせ(格子理論とニュートリノの世代混合現象)により、今まで現象論では満足に説明できなかったニュートリノの大きな混合角を説明しようという野心的な試みである。実際に現象論で仮説として使われている離散的な対称性と格子フェルミオン(スタッガードフェルミオン)が持つ離散対称性の整合性を調べて、D3などの離散対称性がスタッガードフェルミオンに内包されていることがわかった。 3 市松模様の格子理論の連続極限 市松模様の格子理論の連続極限には、この模様に特徴的なフェルミオンの表現とゲージ場の表現が必要で、回転対称性としてはSO(D)の空間回転対称性よりも、SO(2D)の部分群として表現にした方がよいことがわかった。
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