研究概要 |
損失イオンプローブは損失イオン(アルファ粒子)のエネルギーとピッチ角を同時に計測できる検出器である.燃焼プラズマでは損失イオンプローブを用いた損失アルファ粒子計測手法は最有力候補である.しかし,従来用いてきたZnS:Agシンチレータは,耐熱性の問題から,燃焼プラズマにおける計測では使用できない.本研究はこの耐熱性問題を解決することで,損失アルファ粒子計測が可能となるばかりではなく,燃焼プラズマにおけるプラズマ物理の解明を大きく推進する研究である. 耐熱シンチレータを開発するために,シンチレータ諸特性(発光の強度の温度依存性,発光波長など)を調べる発光測定装置を新たに製作した.この装置には温度計,加熱ヒータ,分光窓と分光器等を取り付けた.シンチレータはZnS:AgとY_3Al_5O_<12>:Ceの粉末をバインダーに混ぜて塗布したものを用いて,MeVプロトンとヘリウムビームの照射試験を行った.その結果,He^+ flux ^-4x10^<12>ions/(cm^2s)を照射し,発光強度の直線性を確認した.Fluenceが増大すると発光強度が低下することがわかった.バインダーを熱処理した場合,140分のビーム照射(flux:1.8x10^<12>ions/(cm^2s),fluence:9x10^<17>ions/(cm^2))によりY_3Al_5O_<12>:Ceの発光強度は照射初期の50%に低下した.ITERの年間照射時間に換算すると33%に低下することが分かった.温度特性は従来報告されているものと同様であった.300℃で発光強度が半減するのでより高温でも発光する材料を開発する必要がある. 一方,核融合科学研究所の大型ヘリカル装置LHDにおいて,損失イオンプローブの開発とそれを用いた計測を行った.様々な実験条件で,高速イオンの損失信号の観測に成功した.将来の燃焼プラズマ下での損失アルファ粒子計測を模擬するために,本研究で開発されたシンチレータをLHDプラズマ計測に使用する予定である.
|