研究概要 |
心不全や動脈硬化などの心血管病の病態において炎症や免疫反応の関与が示唆されている。本研究課題では、ヒト心不全症例からの検体を用いて、心血管病の病態における樹状細胞の役割について明らかにする。また、心筋のgp130シグナルとその制御因子SOCS3の心筋炎・心不全における役割を明らかにする。 (1)ヒト心不全における末梢血樹状細胞の動態と予後との関連について検討する。 ヒト心不全症例の末梢血中の樹状細胞が著名に減少し、CD40,CD83,CD86,CCR7の発現は優位に増加していた。さらに、治療後、末梢血中の樹状細胞は優位に増加し、この増加は心機能の指標であるejection fractionや血清中のBNPとtroponin-Tレベルと強い相関があった。さらに治療後のDC数が低い症例では心不全の再発が優位に多く、末梢血中の樹状細胞が心不全の病態において重要な役割を果たしていることが示唆された。 (2)SOCS3-KO(ノックアウトマウス)の心不全発症のメカニズムについての検討 心筋特異的SOCS3-KOを作製した。このマウスは生後6ヶ月より心不全症状がみられ、7ヶ月目までに死亡した。SOCS3-KOの心臓は著名に拡大し、収縮力も低下しており拡張型心筋症様であった。心不全発症までの経過を心エコーで観察したところ、心肥大を経ることなく心不全を発症することがわかった。ジーンチップ解析の結果を検討した結果、gp130シグナルの恒常的な活性化が心不全発症の原因である可能性が示唆された。今後、in vitro, in vivoでこの結果を検証する予定である。
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