研究概要 |
本研究は生体内分子を可視化あるいは不活化するためにセンサー分子を作製して生体内情報変換を解析することを目的とする.このため,標的分子との認識あるいは反応によってソフトな分子間相互作用が変化し生体内情報を化学反応に変換できるセンサー分子をデザイン・合成する. 可視化センサー分子にはMRI用センサー分子を作製する.生体内の特定な生理活性を可視化するためには,特定の生体内分子を捉えMRIシグナルが変化する機能性MRI造影剤の開発が必要とされる.そこで,ガドリニウム(Gd^<3+>)錯体の水交換速度が変化することで緩和時間が変化するセンサー分子を作製する.これまでに,亜鉛イオンに応答して緩和時間が変化するセンサー分子の作製に成功した.この様に,デザインしたセンサー分子を用いてMRI解析を行う例はまだほとんどなく,非常に先駆的な研究である. 本年度は,レポーター遺伝子の産物である酵素活性によって分子の動きが変化し,遺伝子発現を捉えてコントラスト変化へと変換できるMRI用センサー分子の開発を行った.デザインしたセンサー分子は,レポーター遺伝子産物の酵素活性(β-galactosidase)によって血液中のアルブミンに結合する様に変換される.この結果,分子の運動が抑制され,Gd^<3+>錯体の緩和時間は大きく短縮しコントラストが強まる.試験管レベルの研究で酵素活性によってコントラストが増大することが確認されたため,レポーター遺伝子を発現させたマウスを用いて体内動態について実験条件を最適化した.
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