研究概要 |
腸球菌Na+輸送性V-ATPaseのNtpKとNtpIの構造と機能及びその相互作用に関して以下の点を明らかにした。 (i)^<22>Na^+を用いて精製NtpKリングによるNa^+結合の親和性を調べたところ、NtpK1分子あたり約1個のNa^+が約40μMのKd値で結合すると算出された。NtpKリングに結合した^<22>Na^+は、Na^+あるいはLi^+によりほぼ完全にchaseされたが、K^+,Cs^+,Ca^<2+>などのカチオンによっては全くchaseされなかった。 (ii)Li^+結合型NtpKリングの結晶化及びX線結晶構造解析を行い。2.8Åの分解能による解析に成功した。Na^+結合型NtpKリングのイオン結合様式と類似しており、Na^+と酸素原子とが約2.32Åの平均距離で配位していたのに対して、Li^+は約2.16Åの平均距離で配位していることがわかった。 (iii)V-ATPaseの全複合体におけるV_0部分の構造上の位置づけを明らかにするために、9種類のサブユニットから構成されるV-ATPase複合体の全体像を把握するために、9個の各サブユニット遺伝子の欠失株より細胞膜画分を調製し、界面活性剤による可溶化後、グリセロール密度勾配遠心を行って、V_0V_1複合体の形成について調べた。その結果、帰属が不明であったR,Gサブユニットを含めてA,B,C,D,E,GサブユニットがV_1部分を構成し、I,KサブユニットがV_0部分を構成することがわかった。この解析の過程でBサブユニットを欠失していても、少なくともA,C,D,I,Kサブユニットから構成される複合体が形成されることが新たにわかり、Aサブユニットが固定子の構築に関わることと考えられた。
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