研究課題
特定領域研究
本研究は、これまでにない非常に高い精度で、マイクロビーズの位置を計測する新手法を開発し、それを精子ベン毛の微小管振動運動解析に応用することである。高い計測精度を達成するための以下のような基本的な装置の改良が完了した。(1)観察像輝度の改善:LEDレーザー光を一点に集光させマイクロビーズを照明する方法の開発。従来型のコンデンサレンズとアキシコンとの組み合わせがもっとも良い成果を得た。暗視野照明とすることも容易で、マイクロビーズからの散乱光のみを結像系に持ち込む事が可能となる。背景光の発生するショットノイズを完全に無視でき、輝度も通常の暗視野照明よりは2桁ほど高い値となった。(2)高精度の計測には、観察試料をサブナノメーター精度で移動させる駆動装置が不可欠である。ナノポジショナーを制御専用のソフトLabViewで細かく駆動することで、正確な3次元走査が可能となった。これにより、位置計測の精度を精密に評価できるようになった。現在では、従来手法より2桁ほど精度の高い、0.05nm・10kHzの計測精度・時間分解能が達成できている。2次元の位置計測であるが、この装置をウニ精子鞭毛微小管の振動解析に応用した。振動はダイニン分子モーターの運動活性を直接反映したもので、分子スケールの協同性を調べるのに適した現象である。本研究の成果より、その振動パターンは従来考えられていたものよりも複雑であることがわかってきた。単純な正弦波的な往復滑り運動ではなく、小さな2-3のピークを含む非対称な振動であることが明確になった。低レイノルズ数の環境下での運動現象であるために、波形はダイニン分子モーターの協同的な力発生過程をそのまま反映していると期待され、詳細な解析から運動機構に関する重要な知見が得られるものと考えている。
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Stem Cells 24
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