研究課題
特定領域研究
蛍光色素PRODAN処理をした細胞膜除去ウニ精子鞭毛にUVを照射し(PRODAN-UV)、鞭毛屈曲運動の局所阻害を引き起こすことに成功したが、阻害のメカニズムについては不明であり、それを明らかにすることが本年度の目的の一つであった。細胞膜除去したウニ精子鞭毛をトリプシン処理すると、微小管が滑り出してくるが、PRODAN-UV処理をしたものでは起こらなかった。また、細胞膜除去鞭毛について、ほぼ運動が停止するPRODAN-UV処理を行った後、ATPase活性を測定したところ、ほとんど変化がなかった。これら二つの結果から、鞭毛軸糸中においてダイニン分子は微小管の間に架橋を形成するが、酵素機能は失われていないことが推測される。ダイニン分子がどのような状態になるのか、単離したダイニンによって調べる必要がある。また、PRODAN-UV処理後の軸糸タンパク質をSDS電気泳動して調べたが、一次元、二次元共に明らかな差は検出できなかった。この結果は、ダイニン分子がPRODAN-UV処理によって壊裂を引き起こすようなことはないことを示唆している。これらについてもダイニン腕複合体を単離して調べる必要が有る。ウニ精子より複雑な構造をもつ哺乳類精子において細胞膜のある状態でPRODAN-UV処理実験を行った。マウス精子を用いた実験では、ミトコンドリアのある中片部では阻害作用が主部より低いことが観察された。また、鞭毛全体をPRODAN-UVで阻害しても、屈曲波伝播において中片部と主部では反応が異なった。さらにcccpでミトコンドリア活性を阻害すると、興味深いことにPRODAN-UV処理に対する耐性が上昇した。これらの結果は、PRODAN-UV処理が代謝を含めた鞭毛運動維持機構の解析に有効であることを示唆している。マウス精子での細胞膜除去-運動再活性化はかなり困難であるが、それを行い、比較していく予定である。
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