研究概要 |
本研究計画は、我々研究グループのこれまでの研究成果から、ヒト培養細胞間期核内より、セントロメアクロマチン(CENP-Aクロマチン)複合体=ICENを単離精製し、40種類のICEN構成蛋白を明らかにした所から出発している(Obuse et al, Genes Cells,9,105-120,2004)。40種類のICEN蛋白の中から、機能未知の蛋白7種類について、遺伝子の全長をクローニングし、EGFP遺伝子との融合遺伝子を作成し、ヒト細胞に導入し、安定トランスフォーマント株を作成した。7種類のICEN蛋白(ICEN22,24,32,33,36,37,39)が細胞周期を通して、セントロメアに局在する事を明らかにした。さらに、7種類それぞれのICEN蛋白をsiRNAによりノックダウンすることにより、染色体分配に異常が生じ、高頻度に染色体異数体が生じる事を示した。以上の結果から、7種類のICEN蛋白が染色体分配に係る新規セントロメア蛋白である事を明らかにした(Izuta et al, Gene Cells,11,673-684,2006)。 次に我々は、CENP-Aクロマチン形成機構を明らかにする目的で、ICEN構成因子であるRsf1-hSNF2H(ICEN2-ICEN8,RSF)リモデリング複合体に着目し、研究を進め以下の成果を得た。 1.Rsf1(ICEN2),hSNF2H(ICEN8)に対するモノクローナル抗体の作成。細胞染色、ウェスタンブロッティング、クロマチン免疫沈降に使用可能である。特に抗hSNF2H抗体はクロマチン免疫沈降にすぐれた特異性を示し、特にnative-クロマチンの単離精製にすぐれている。 2.(i)Rsf1及びhSNF2Hが間期にセントロメア局在する。(ii)siRNAによるRsf1除去により核内におけるCENP-Aの量が顕著に減少し、prometa期からmeta期への進行が顕著に遅滞する。(iii)siRNA除去により、EGFP-CENP-Aのセントロメア局在が阻害される。(iv)in vitro再構成系により精製RSF複合体はCENP-Aヌクレオソーム形成活性及びスペーシング活性を有する。以上の結果から、我々はICEN構成因子に含まれる唯一のヌクレオソームリモデリング因子であるRSF複合体が、CENP-Aクロマチン形成因子であると結論した。(論文投稿中)
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