研究概要 |
AtATG遺伝子破壊株では栄養飢餓条件下に老化が促進されることや根の伸長が阻害されることが明らかとなった(Yoshimoto et al., Pkant Cell, 16, 2967-2983, 2004).この結果はシロイヌナズナにも他の生物種と同様のオートファジーのシステムが保存されており,ATG遺伝子がオートファジーの進行に重要な役割を担っていることを示唆している.そこで,高等植物でオートファジーの進行をモニタリングする系を開発した.出芽酵母や高等動物細胞において,Atg8はオートファジーの可視化マーカーとして知られており,オートファジーの進行に伴って液胞/リソソームに輸送される.GFP-AtATG8融合タンパク質を発現させた形質転換植物を作製したところ,野生型植物において,GFP-AtATG8は細胞質中のリング状構造(オートファゴソーム)に局在し,窒素飢餓条件下で液胞内へと移行した.オートファジー能を欠損した植物においてGFP-AtATG8の挙動を解析したところ,窒素飢餓条件下でもGFP-AtATG8は液胞内に移行しなかった. 最近になって,ウイルスに対する抵抗性反応の一つ,過敏感反応細胞死(HR-PCD)の現象とオートファジーが密接に関連していることが報告された(Liu et al., Cell, 121, 567-577, 2005).我々もほぼ同時期に植物病原バクテリアPseudomonas syringae pv. tomato感染時にHR-PCDが過剰に起こることを見いだした. また,花粉管形成時にオートファジー関連遺伝子AtVPS30遺伝子が重要な機能を果たしていることを明らかにし,論文として発表した(Fujiki et al., Plant Physiol., 143, 1132-1139, 2007).
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