研究概要 |
目的 女性ホルモンはホットフラッシュ、冷えなどの女性特有な体温調節、感覚異常に関係していると考えられている。しかしながら、その明確なメカニズムは明らかではない。本年度は、女性ホルモンがi)体温概日リズムにいかに影響を与えるか,ii)暑熱、寒冷暴露時の体温調節反応にいかに影響を与えるか iii)性周期に応じて体温調節反応、温度感覚はいかに変化するかを調べるとともに、そのメカニズムを検討した。i,iiについては動物実験にて検証し、血については人での実験を行った。方法と結果 i)卵巣摘出ラットを用いて1週間の体温の変更を無拘束に記録した。約24時間の周期性は認めたが、3-4時間周期の大きな体温変動成分が現れるリズム変調が生じた。この変調は皮下に17beta-estradiol含有シリコンチューブを埋め込むことにより改善した。ii)卵巣摘出ラット、および17イ-estradiol含有シリコンチューブ皮下埋め込みによるエストロゲン補充を行ったラットの33℃,5℃の環境温での耐暑、耐寒反応を比較した。耐暑、耐寒反応とも卵巣摘出ラットでは低下しており体温が各々エストロゲン補充ラットに比べて、上昇もしくは低下した。このメカニズムを明らかにするために、視床下部でのcFOS発現を調べた。暑熱下では内側視索前野、寒冷下では背内側核に多くの発現画あったが、体温の変動は少ないのにも関わらず、エストロゲン補充ラットで多くのcFOS発現が認められた。iii)28℃の温度中性域から、23℃の中度寒冷環境下に若年女性を、黄体期、卵胞期に各々暴露した。深部温は、28℃,23℃とも黄体期に高かったが、温度感覚は同一であった。結語 女性ホルモンは,体温調節に大きな影響を与える。また、このメカニズムとして、中心温に対する脳での温度感受性のエストロゲンの変化であると予想した。
|