研究概要 |
メダカを用いて生殖腺構成する細胞種の同定ならびに系譜解析を行なった. その結果「生殖腺形成場」が存在することが明らかとなり,そこから二種類の生殖腺体細胞が出現、生殖細胞も3つの移動様式を経てその「場」へ移動することが明らかとなった(Kurokawa et al, 2006; Nakamura et al, 2006).以上のことは「生殖腺形成場」は生殖細胞と生殖腺前駆体細胞とが会合する重要な場でもあることを意味している。この後生殖腺体細胞と生殖細胞とは腸管背側へ移動して生殖腺原基を形成する. また生殖細胞をひとつの細胞系列と見て、生殖腺形成に与える影響を生殖細胞が完全に欠損するメダカを作製して調べた.このメダカは雌から雄への性転換が生じ,女性ホルモンを産生する二種類の細胞系列が分化せず,また他の体細胞系列も雄化の遺伝子発現上雄化の傾向を示すことが明らかとなった.生殖腺の構造は,卵巣にも精巣にも見られる共通の形態を示していることも,組織学的かつ遺伝子発現から明らかとなった.このことは生殖細胞が性分化過程に積極的な役割を持つことを意味する(Kurokawa et al, submitted). totoro変異体は生殖細胞が異常増殖する変異体である.この表現型を調べたところ,遺伝的雄の半数で雌へ性転換していることが明らかとなった.さらに、部分的に卵巣構造をとる生殖腺を調べると卵の周りの体細胞が雌化していた(Morinaga et al, 2007).以上は生殖細胞が雌化へ非常に重要な役割を持っていることを示唆している. また生体内で生殖細胞を可視化し分裂を調べたところ,生殖細胞維持の分裂と配偶子分化への分裂とが区別されることが明らかとなり,維持型から分化型への分裂への移行が性依存的に制御されていることが示された(Saito et al, submitted).
|