研究課題
特定領域研究
爬虫類である全てのワニ類と大部分のカメ類の性決定は、環境要因(外気の温度)によって決定する事が分かっている。しかし、この性染色体によらない温度依存的性決定の分子機構については、ほとんどわかっていない。本研究は、この爬虫類の性決定・性分化の分子機構を解析することを目的として行なわれた。本年度は、温度と密接に関連する遺伝子の候補として、熱ショックタンパク類の関連遺伝子のクローニングを行なった。これまでの研究からも予想されたが、鳥類のHSPとの相同性が高いと言う事が判明した。さらに、ワニは初期発生の一定の時期(ステージ19から24まで)の温度が重要で、この時期に性が決定する事が分かっている。オスになる温度、メスになる温度でそれぞれ処理した初期胚から生殖腺を摘出し、今回得られたHSP群の発現パターンを調べたところ、いずれのHSPもすでにステージ19から発現している事がわかった。さらに、その発現量は発生にしたがって増減することはなく、ほぼ一定のままであった。また、オスとメスでの差は観察できなかった。この結果は、温度依存性の性決定機構をもつワニでは、その性決定にはHSPは関与しないのではないかということを示唆している。しかし、メスへの分化に必要と考えられているエストロゲン受容体のか活性化機構にはHSPが関連することも知られているので、今後、さらに局在などを調べ性決定とHSPの関連を詳細に調べる必要があると考えている。さらに、オスへの分化に必要だと考えられる、抗ミュラー管ホルモン(AMH)遺伝子の全長のクローニングに成功した。また転写調節領域の単離も完了しており、今後どのように温度からの刺激がどのようにAMHの発現調節に繋がっていくのかを解析していく予定である。
すべて 2006 2005
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