研究概要 |
スプライソソームは核内でpre-mRNAからイントロンを正確に切り出し、エキソンを連結してタンパク質を直接コードする成熟したmRNAを生じるスプライシング反応を担う。スプライソソームは5種類のRNAと多数のタンパク質からなり、リボソームと同様に核酸-タンパク質超分子複合体である。スプライシングはこれらのRNA-タンパク質複合体(snRNP)といくつかのnon-snRNPタンパク質の会合と解離によって進む。そのため、スプライソソームの構造生物学的研究は、その構造構築の複雑さおよび動的性質が大きいため非常に困難なものとなっている。 本研究では、スプライソソーム活性中心と呼ばれるSplicing Factor(SF)3bを中心として、X線結晶構造解析の手法を用いた構造生物学的研究による原子レベルでのスプライシング機構の解明を目的とする。SF3bは7つのタンパク質(SF3b155,SF3b145,SF3b130,SF3b49,SF3b14b, SF3b10,p14)からなる安定な複合体(450 kDa)を形成しており、イントロンの分岐点近傍のpre-mRNAに直接結合することによってスプライシング反応を開始させる役割を担う。 本年度はSF3b構成タンパク質のX線結晶構造解析に適した試料の調製を行った。まず、ヒトHeLa細胞からSF3b構成タンパク質をコードする遺伝子をクローニングし、大腸菌などを用いてSF3b構成タンパク質の大量発現系を構築した。これまでに4種類(SF3b155,SF3b14b,SF3b10,p14)のSF3b構成タンパク質の発現・精製系を確立することができ、結晶化を行っている。現在はRNA鎖を含めた複合体結晶構造の解明を目指し、生化学的手法を用いてタンパク質間相互作用やRNA鎖結合能などを調べている。
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