研究概要 |
コアプロモーター構造を認識する基本転写因子TFIIDは、転写調節因子から受け取った信号を転写量の増減へと変換する上で中心的な役割を果たす。TAF1のN末端に存在するTAND(TAFN-terminal domain)は、TBPに強く結合する性質を持ち、転写調節因子の存在下においてTBPをTATAボックスに向けて放出する役割を担うと考えられている。本年度はまず、TAND機能の自律性を検証するべく、TAF3,TAF4,TAF9のN, C両末端へのTAND異所移植を行い、いずれのTAFに融合した場合においても、TANDが正常に機能し得ることを示した。一方、転写調節因子BAS1によるTAND依存的な転写活性化機構について詳細な検討を行い、(1)BAS1上に存在するTAND依存性転写活性化ドメイン(AD)とTATAボックスが協調的に働くことにより、TAND-TBP複合体の解離が起こること、(2)BAS1とBAS2の相互作用により形成された新たなADが反応をさらに進行させること等を明らかにした。また第三、四、五、六染色体を約200bpの高解像度で網羅したタイリングアレイを用いて、TFIIDの全サブユニット及び基本転写因子群,SAGAの一部のサブユニットについてChIP-chip解析を行い、(1)TFIIDはほぼ全てのプロモーター上に結合していること、(2)SAGAとTFIIDのプロモーター結合は互いに排他的ではないこと、(3)TFIIFはpol IIとともにORF内に進入することはなくプロモーター上にとどまること等を新たに示した。
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