研究課題
基盤研究(A)
水素はヘリウム以外に自然に存在する超流体の唯一の候補である。水素液体が超流動に相転移する温度は三重点より低いため、その相遷移の観測は非常に困難であり、水素超流動の実現はまだ成功していない。ヘリウムクラスターの赤外分光によってヘリウム超流動の研究と同じ手法で、気相の水素分子クラスターの赤外分光によって水素分子超流動を見出すことが期待される。本研究は従来の赤外ダイオードレーザー分光器を用いて一酸化二窒素(N_2O)と13個水素分子までのパラおよびオルト水素クラスターについて振動回転スペクトルの観測が成功した。パラ水素クラスター(para-H_2)_N-N_2Oの回転定数の解析結果では、水素分子数の増加で回転定数の大きさがN=13まで単調的に減少し続け、分子超流動が始まった形跡は認められなかった。観測されたN=15以上の(para-H_2)_N-N_2Oクラスターの振動回転スペクトルは突然不規則になり、分子超流動の始まりとも考えられる。より多くの水素分子クラスター種を研究するために、中赤外領域に広く発振できる連続波OPOレーザーを用い、超音速パルス分子線装置および非点収差多重反射セルと組み合せて、最初に変調型の赤外吸収分光器を製作した。2つの異なる周波数の変調を用い、吸収ありとなしの2つの信号の比によって、OPOレーザー出力の変動を抑えることができた。さらに、水素分子クラスターを検出できる感度を実現するために、最近活発に使われているキャビティリングダウン分光法装置を立ち上げた。この分光法の感度は光源の出力変動に依存しない特徴があり、OPOレーザー出力変動の問題を避ける最適切な方法だと考えられた。メタン分子の非常に弱い振動回転遷移を観測し、周波数を掃引しない場合は吸収係数が最小1×10^<-7>cm^<-1>まで検出できることがわかった。さらなる改良で感度を向上し、超音速分子線と組み合わせて水素分子クラスターのスペクトル観測への応用が期待される。
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Journal of Chemical Physics 123
Journal of Chemical Physics 123・11
ページ: 114314-114314
Journal of Chemical Physics 123・3
ページ: 34301-34301