研究課題
基盤研究(A)
本研究は、歪補償量子ナノ構造の微細化・高品質化および高密度化を推進して、量子ナノ構造を用いた高性能・高機能な光通信用半導体レーザの実現を目的として行われた。おもな実績は下記のとおりである。(1)電子線露光、低損傷・微細ドライエッチング技術を駆使し、活性層分離型5層量子線幅DFBレーザを作製し、量子細線幅30nm、ストライプ幅3.4μm、共振器長350μmの素子において、室温連続動作におけるしきい値電流2.1mA、副モード抑圧比50dBを実現した。(2)活性層分離型DFBレーザの低しきい値・高効率動作を目的として、活性DFB領域と受動DBR領域からなる異なる量子細線状活性層を有する分布反射型(DR)レーザを作製し、低しきい値動作ではしきい値電流1.2mA、高効率動作では前端面より外部微分量子効率36%を実現した。そして回折格子形成時のエッチング深さを従来の120nmから180nmに変更し、屈折率結合係数を約50%高めたDRレーザを作製した。その結果、室温・CW駆動条件下で、しきい値電流0.8mA(しきい値電流密度180A/cm^2)、外部微分量子効率20%、しきい値電流の2倍の注入電流において副モード抑圧比(SMSR)41dBの良好な低しきい値動作、単一モード特性を実現した。(3)室温以上の高温領域におけるしきい値電流上昇の抑制・完全単一モード動作を実現するため、室温におけるブラッグ波長をELピーク波長の長波長側に54nmのチューニングを施した歪補償多層活性層分離型DFBレーザを作製した。室温において横高次モードやFPモードでの発振は観測されず、しきい値の2倍の注入電流において副モード抑圧比51dBの良好な単一モード動作が確認された。10℃から85℃の温度範囲において、モード跳びは観測されておらず、しきい値電流は50℃において最小値5.4mAをとる温度依存性が得られた。この温度範囲でのしきい値電流密度の温度変化は±19%、外部微分量子効率の低下は24%と大幅な温度安定化を実現した。
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