研究概要 |
標準添加法による定量化を利用して,燃焼排気物質のレーザー迅速計測法を開発した. 1.一酸化窒素(NO)のLIF計測法の開発:(1)濃度計測では,A^2Σ^+←X^2II(0,0)遷移に属するP_<11>(23.5),P_<21>+Q_<11>(14,5),Q_<22>+R_<12>(20.5)の226.03nmにある励起線を用いて,A^2Σ^+←X^2II(0,2)遷移の蛍光(246〜248nm)強度を計測した.温度は二線蛍光法によって,ボルツマン分布から決定した.励起線はP_<11>(36.5)(225.18nm)とR_<22>(20.5)(225.59nm)で,濃度計測と同じ蛍光強度を計測した.バーナー火炎に適用して,添加NOモル分率と蛍光強度の線形関係が成り立ち,標準添加法による濃度決定が可能なことを示した.メタン-空気予混合火炎,メタン拡散火炎,プロパン拡散火炎に適用して,濃度・温度計測が可能な事を示した.在来のサンプリングプローブと化学発光式濃度計測器を組み合わせた方法では,計測器までの導管内での化学反応が影響するため,高温場での計測に信頼性がなかったが,この新しいLIF法によって定量評価が可能になった.(2)ジェットエンジンへの適用を目指して,ガスタービン排気ガスの計測を行い,濃度計測が可能なことを実証した.排気ガス温度が低温のため,温度計測法を変え,A^2Σ^+←X^2II(0,0)遷移の0_<12>(1.5)(226.89nm)と0_<12>(19.5)(226.90nm)を励起線とした.計測温度約400℃を得たが,誤差が大きく,他の適切な励起線を選択する必要があることが分かった. 2.レーザー誘起ブレークダウン分光法(LIBS)による微量元素濃度計測法の開発:(1)石炭燃焼灰中の微量元素質量分率測定:Si, Mg, Ti, Fe, Ca, Al, Mn, Cr, V, Na, Kの元素同定ができた.MnとCrについて質量分率を測定した.Mnの測定では,JIS M 8815による測定結果が464ppmであり,LIBS計測では強度と濃度に線形関係が成立して,453±17ppmを得た.Crの計測では,線形関係は成り立たず,飽和曲線フィッティングで145ppmを得た.(2)土壌中微量金属元素濃度計測:カドミウム(Cd)と鉛(Pb)について計測した.粒径180〜425μmの土壌粉体をプラズマ化し,各元素の発光波長強度を計測した.Cd質量分率130ppmの土壌を基本試料として,基本試料に100,200,500,1000ppmを添加して,508.58nmの波長で計測して,129±2ppmの結果を得た.検出限界は約70ppmである.30ppmのPb基本試料について,同様に405.78nmの波長を計測し,28.7ppmを得た.検出限界は約3ppmである.環境基準値150ppm以下の値であり,迅速モニターとして利用できる可能性が実証された.
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