配分額 *注記 |
50,700千円 (直接経費: 39,000千円、間接経費: 11,700千円)
2007年度: 9,230千円 (直接経費: 7,100千円、間接経費: 2,130千円)
2006年度: 10,270千円 (直接経費: 7,900千円、間接経費: 2,370千円)
2005年度: 31,200千円 (直接経費: 24,000千円、間接経費: 7,200千円)
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研究概要 |
本研究者が発見した「大動脈弁の閉鎖時に振動が心筋を伝搬する生理学的現象」を計測し,循環器病学等の分野に貢献することを目的として,以下の成果を得た. 1. 超音波ビームを限定走査し心臓壁内に設定した数千点で,振動を同時に計測する手法を開発し,振動波形にフーリエ変換を施し,振動が心臓壁上を伝搬する際の時間遅れに相当する位相を算出し断層像を描出した.さらに位相遅れの空間分布から位相速度を決定し,伝搬速度の周波数分散特性を算出した.振動の伝搬モデルとしてラム波を採用し,計測結果との整合から心筋の粘弾性特性を決定した. 2. 以上の処理プロセスを独自の計測システムとして実現した. 3. 心臓のファントムとして弾性球殻を作製し,加振器によってパルス状振動を伝搬させ,上記の手法を適用し,機械的試験によって得られたシリコーンの粘弾性値と比べ,10%以内の誤差で粘弾性が推定できることを確認した. 4. 健常者5名へ適用し,大動脈弁が閉鎖するタイミングに自発的に発生したパルス状振動の計測を行い,心筋を伝搬する速度に関し同一被験者の拍間に十分な再現性のあることを確認した. 5. 健常者5名に関し得られた粘弾性値が健常な被験者間の差が20%程度であることを確認した.粘弾性値の時間的遷移が,5名の被験者に関してほぼ同一であることを確認した.また,文献値には動物の心筋に関するものしかなかったが,イヌの心筋の弾性値,粘性値とほぼ同一の値が得られた. 6. 心臓疾患(陳旧性心筋梗塞)患者10名へ適用し,患部で振動の振幅と伝搬速度が減少していた.これらは,縦波を用いた結果とも一致しており,横波による組織同定の重要性が裏付けられた. 7. 以上,本研究者によって発見された心臓壁内を振動が伝搬する現象に関し,健常者と患者における計測を行い,臨床の現場で充分利用可能なシステムを構築し,臨床診断の可能性を示す貴重な結果を得た.
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