研究課題
基盤研究(A)
後縦靱帯骨化症の遺伝要因を解明するためにまずはゲノム全域での疾患遺伝子同定を試みた。罹患同胞対数は141対に増やすことができている。ゲノムを網羅する420個のマイクロサテライトマーカーを用い、もっとも強い連鎖を21番染色体長腕で認めた。連鎖領域の150個の遺伝子、600SNPについて、2段階のスクリーニングにより、7個の遺伝子で有意差を得るにいたった。collagen 6A1遺伝子(COL6A1)に32個のSNPを同定し、それぞれでアソシエーション・スタディをおこなった結果、イントロン32に存在するSNPで最も強い有意差を得た(P=0.000003)。COL11A2同様患者靭帯細胞を用いてCOL6A1へのスプライシングへの影響などを検討したものの、いまだSNPによる機能変化を検出できていない。OPLLは多因子疾患で、遺伝要因のみで病態を形成するわけでなく、OPLLを理解するためには多面的なアプローチが求められる。OPLLでは後縦靱帯そのものもしくは他の靭帯細胞を外科的に得ることができ、患者の組織での遺伝子発現レベル変化を調べることが可能である。OPLL患者由来靭帯細胞を得ることにより骨分化の程度、mRNA発現、実験手法による遺伝子機能解析などをおこなうことができる。本研究において、細胞の遺伝子発現を網羅的に検出する手法、マイクロアレイ法により包括的遺伝子発現、で特徴的な遺伝子発現を検討し、ひいては病態の全体像を明らかにすることを試みた。OPLL患者の後棘問靭帯を用いる。OPLL由来細胞において骨化誘導に伴い変化する遺伝子群を検討した。対照と比較して2倍以上の遺伝子発現差を示しかつ統計的に有意差を認めた遺伝子を選択した。OPLLで骨分化とともに顕著に発現上昇を認めた遺伝子の中で、転写因子promyelotic leukemia zinc finger(PLZF)とそのホモログであるFAZFを同定できた。骨分化メディウムであるOSによりPLZFは誘導され、FAZFはBMP-2で誘導され、異なる役割分担を有する事が示された。PLZFは骨分化のマスター遺伝子であるCBFA1の上流に存在することを明らかにでき、FAZFもまたBMP-2誘導性骨代謝に関連していることも示すことができた。
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