研究概要 |
多数の計算機が埋め込まれ,身につけた計算機と連動する環境(近い将来に期待されるユビキタス・ウェアラブル環境)の中で,ユーザが日常生活の活動やオフィスワークなどを行う際に,外的な記憶空間を逐次構築しながら利用するためのインタフェースのプロトタイプシステみを開発した.外的な記憶空間とは,従来の計算機(PC)ではなく,生活空間の活動の中で頻繁に使用されるもの(机,本棚,トレー,卓上照明器具,バッグ,手帳など)とその携帯電話・着用型計算機による電子的な拡張により,それらを記憶の掛けくぎ(peg)として,活動空間内にユーザの主観において配置される記憶からなる空間である.この記憶空間を構築するシステムとして,空間型電子記憶術(SROM)の概念を構築し,ウェアラブル,RFIDシステム,カメラなどのセンサ類とそれらの情報提示機能に基づいて,記憶空間構築の基礎を実証的に検証した.記憶の掛けくぎ(peg)として,記録映像を用いる方法,画像の重畳による方法,またその認知的な識別,保持特性について詳細に調査した. その結果として,記銘の対象を結びつける記憶掛けくぎとしての実世界の多様なオブジェクトを実空間において多様な方法論で保存・アクセスするデータベースシステムが構築された.電子的に拡張された記憶掛けくぎ(vMPeg)として,場所の画像を用いる方法論を提案し,1箇所10秒程度という極めて短時間の構築時間においても8ケ月後まで極めて高い保持率を有すること,その記憶掛けくぎへの記憶項目の連合においても,顕著な記銘・再生効率が得られることが,被験者による記銘実験により示された.これにより,本研究が目的としている生活記憶空間の構築型インタフェースのプロトタイプが実現されたといえる.
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