研究概要 |
医療や看護などでの種々のアクシデント(事故や過誤)を防止するため,インシデント(事故には至らなかったが些細な事象であっても事故につながると予想される事例)に対するレポートが,自己申告形式で毎月報告されている。本研究は,インシデントレポートに関係のある病院情報システムのデータに着目し、蓄積された情報をアクティブマイニングにおける技術に基づいて解析するシステムを開発し、インシデントの要因を明らかにすることを目的とした。本研究では,平成17年度データウェアハウスサーバを中心としたシステム一式を設置,インシデントレポートの電子入力システムの開発を進めて,インシデントレポートを電子データとして蓄積できるようにしたが,本年度はこれらの蓄積されたデータをもとに解析を進めた.平成18年度前期においては,インシデントレポートのデータとリンクする形で必要な情報を病院情報システムから抽出するデータウェアハウスサーバを構築した.最後に,平成18年度後期には,蓄積されたデータをもとに,データの解析を行った.本研究において,以下の点が明らかになった.(1)医療行為全体は一日に約7000件程度が病院内で施行されているが,インシデントの登録は年120件たらずであり,月約10件である.したがって,インシデントが医療行為と結びついていると仮定すれば,発生確率はほぼ2万の1である.(2)インシデントと年齢とには高い相関がある.(3)インシデントと診療科との関連性は高くなかった.(4)当初,申請者らはインシデント・アクシデントが医療行為に結びついたものであると考えていたが,医師・看護師が認識するインシデントの中には,転倒を含めて,必ずしも医療行為そのものに結びつくものではなく,患者の不注意から来るものが多くふくまれ,それが報告の50%以上であった.したがって,診療行為に直接結びつくインシデントの発生確率は4万の1程度であることがわかった.
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