研究概要 |
本研究は,生産現場における重量部品の搭載補助装置スキルアシス下(SA)を用いた人による繰り返し作業を対象とし,予めハザードが同定されているという条件下で,作業中のリスクを知覚し評価するまでの一連のリスクアセスメント・プロセスを自動化することを目的とした. 研究計画初年度は,要素技術の開発を行った.すなわちまず,作業者のひじの接近をモニタすべく,加速度センサおよびジャイロスコープを用いた「ひじ軌跡検出器」を開発した.つぎに,隠れマルコフモデル(HMM)を適用して,シート突起部が危険な軌跡をたどるとする尤度が高い場合に警告を発生する予測推論器を開発した.以上の検出器,予測推論器に対して,実験でそれぞれの機能が正常に動作することを確認した.さらに,テキストマイニング技術に関して,コーディングと呼ばれる前処理を行うプログラムをRuby言語を用いて開発し,その有効性を誤り率によって確かめた. 計画2年度目は,さらに本研究に求められる仕様へと要素技術の改良を行った.予測推論器については,これにSAの現在の位置,操作力情報のみならず,そのダイナミクスとインピーダンス制御の状態方程式を組み込んで,未来の時刻での望ましい状態をHMM分類器の入力として利用できるように改良し,実験によって評価した.つきに,現場の映像等のマルチモーダル情報に対して,そのタイムライン上にインシデントを構成する逸脱とそれらの原因系のM-SHELモデル表現を記述できるインシデントレポートのWeb入力支援ツールを開発した. 最後に,SAの位置および力の検出機構をすべて2重化してその安全性を嵩めた上で,これを用いた実搭載作業を対象とし,ハザードポイント近傍のボリウムを調整することと等価な予測時間の長さ調整により,インシデントを生じないようにシステムが収束することを確認する実験を行った.その結果,HP近傍の半径2.2cmで予測時間0の条件が適するとの結果を得た.予測器の有効性をさらに検証するためには,より危険なHP近傍半径2.2cm未満にして再実験する必要があり,今後の課題とされた.
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