研究概要 |
表面筋電図から活動運動単位の解剖学的・生理学的情報,すなわち,活動運動単位の位置(深さ),強度,サイズ,筋線維密度,活動参加,発火頻度等を抽出する逆解析について検討した. 表面運動単位活動電位(MUAP)計測と,逆解析により,(1)活動運動単位の深さは0.5〜7.7mm,強度は0.1〜230.9nAmであることが分かった.また,(2)推定した深さと強度の関係から,運動単位の半径は1.4〜5.4mm,筋線維密度は0.4〜9.3fiber/mm^2と推定された.さらに,拡張型電極列を開発し,新たな逆解析手法を開発した.一方,運動単位の解剖学的・生理学的および力学的パラメータを有するモデルを構築し,表面筋電位波形をシミュレートすることにより,(3)最大随意収縮時より発揮力の小さい急激な収縮時には筋電位振幅の割に運動単位の活動参加数が少ないことが推測された.(4)発火頻度などの発火統計については,今後,モデルの拡張により明らかにする必要があることが示唆された.また,(5)有限要素法による大規模シミュレーションを通して,表皮,真皮および皮下組織などの不均質層や運動単位の筋線維密度の影響を検討した.その結果,深さの推定値は条件の変化に対して頑強で,安定して推定できることが明らかになった. この逆解析手法には,現実的に計測不可能な過程,例えば,活動運動単位の位置や強度,広がりや筋線維密度,干渉条件下における運動単位の発火頻度や活動参加などの,解剖学的・生理学的過程を推定できる利点がある.今後,さらに計測手法とモデルおよびシミュレーション手法を拡張すると同時に,本研究で十分実施できなかった高齢被験者への適用を進める必要がある.それにより,神経筋に関する,より詳細で有効な知見が得られると期待できる.
|