研究概要 |
スローリフトによるレジスタンス運動における短縮性および伸張性筋収縮動作の時間比の相違が,ホルモンの分泌動態に及ぼす影響を検討した.成人男性9名を対象に,以下の4試技をそれぞれ異なる日に行わせた. ・低負荷(約40%1RM)を用い,重量を5秒で挙上・1秒で下降させる試技(5-1) ・低負荷(約40%1RM)を用い,重量を3秒で挙上・3秒で下降させる試技(3-3) ・低負荷(約40%1RM)を用い,重量を1秒で挙上・5秒で下降させる試技(1-5) ・高負荷(約80%1RM)を用い,重量を1秒で挙上・1秒で下降させる試技(1-1) 運動には両脚でのレッグエクステンションを用いた.運動前後には採血し,血中ホルモン濃度の変化を検討した.また,運動中およびセット間の休息中には酸素摂取量および心拍数を測定した. その結果,総仕事量は1-1試技が他の3試技に比較して有意に高値を示した.スローリフトによる試技間では,1-5試技が最も高値を示し,5-1試技との間に有意差が認められた.運動後の血中乳酸濃度は,1-1試技および5-1試技が1-5試技に比較して有意に高値を示した.運動前後における各種ホルモン濃度の変化量には試技間で有意差はみられなかったが,1-5試技ではノルアドレナリンおよびフリーテストステロンの変化量が低値を示した.また,1-1試技および5-1試技は,酸素摂取量および心拍数が高値を示す傾向にあった.運動前後の最大筋力の低下率には試技間で差はみられなかった. 上述の結果は,スローリフトによるレジスタンス運動では,短縮性局面の時間比を増加させることによって,代謝ストレスが亢進すること,伸張性局面の時間比を増加させることによって,ノルアドレナリンおよびフリーテストステロンの分泌応答や呼吸循環系に対する負荷が軽減する傾向にあることなどを示唆するものである.
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