研究概要 |
巨大地震時の長周期地震動は、大規模堆積盆地構造によって成長し、高度化する大都市圏における長周期構造物に様々な被害を引き起こす可能性がある。本研究では近い将来発生が懸念される巨大地震を対象とした大都市圏(大阪,名古屋,東京)での長周期構造物の被害予測を行い,被害軽減対策に必要な資料を提供することを目的としている。 今年度はまず、被害予測に必要な高精度な強震動予測に不可欠な震源のモデル化手法の検証とともに、補強や改良を行った。具体的には、2005年宮城県沖など巨大地震の不均質な震源特性を調べ,強震動予測レシピに従った特性化震源モデルの適用の可能性を検討した。 次に,大阪盆地及び濃尾盆地について東南海・南海地震を対象とした長周期地震動予測を行った。その結果,盆地内の予測地震動の最大速度振幅や擬似速度応答スペクトルの分布は地下構造の影響によって複雑なものとなった。 次に,予測した地震動を用いて,建物変位・層間変形角・損傷に寄与するエネルギーの速度換算値VDの3つの指標により長周期構造物(超高層ビルを対象)の耐震性能を簡易モデルによって面的に評価し,巨大地震時の大規模堆積盆地内の長周期構造物の地震危険度マップを作成した。その結果,大阪平野の多くの地域において設計基準を上回る層間変形角やエネルギー入力が建物に生じる可能性を示した。 最後に,関東平野及びその周辺地域において発生確率が高いと予想される巨大地震の強震動予測結果を用いて,関東平野内の高層建物の応答性状の検討,及び室内被害の予測を行った。その結果,想定した高層建物の最大層間変形角は1/100radを上回り,最大応答変位は建物頂部で約2mとなった。また,巨大地震時の高層建物内での家具転倒率は,建物固有周期が1秒程度の場合に最も大きく,固有周期が長くなると減少するという結果を得た。
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