研究分担者 |
池田 浩敬 富士常葉大学, 環境防災学部, 教授 (80340131)
田中 聡 富士常葉大学, 環境防災学部, 助教授 (90273523)
土岐 憲三 立命館大学, 理工学部, 教授 (10027229)
中川 一 京都大学, 防災研究所, 教授 (80144393)
高島 正典 富士常葉大学, 環境防災学部, 助教授 (60424909)
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研究概要 |
現在,社会に提供される災害発生の危険度情報は,大雨や洪水,津波や高潮などの自然災害に関する気象予警報や,警戒宣言発令に関する観測情報・注意情報・予知情報など一連の東海地震に関する情報,政府の地震調査研究推進本部において公表された確率論的地震動予測地図など多岐にわたるが,その危険度を表す表現方法はまちまちであり,また表現された危険度が持つ危険性の基準とそれに伴ってとるべき防災行動が,情報の受け手である市民に理解されにくいという課題を抱えている。本来危険度情報は,情報の受け手である市民等にとってわかりやすい情報提供が行われる必要があり,個々の市民にとってどう判断・行動すべきかがわかる情報であることが最も大切な要件である。 これまで災害危険度を表現する方法として,(1)地震の発生確率など確率論的表現が用いたもの,(2)理学的に見たハザードの大きさによって規定される基準(気象警報など)を用いたもの,(3)工学的見地に基づく被害の大きさによって規定される基準(建物倒壊危険度など)を用いたものが主であった。しかしこれらの表現方法では,その情報を受け取った市民が,危険度の切迫性を理解し具体的にどのような対応に結びつければよいか判断できないという限界があった。本研究は,市民にとってわかりやすく,さらに市民がどう判断し行動すればよいかの意思決定が可能となるための市民が納得できる危険度の表現方法の検討を行った。平成16年新潟豪雨災害,豊岡水害,新潟県中越地震,JR福知山線列車脱線事故,ハリケーンカトリーナなど過去における災害時の災害対応従事者ならびに被災者に対する災害エスノグラフィー調査を実施し,危険度の認知と災害対応行動を規定する要因を明らかにし,判断・意思決定に影響をもたらした情報,災害対応行動に変化をもたらした情報の分析を行った。さらに災害時の調査のデータを整理し,災害エスノグラフィーを作成した上で,それに基づきワークショップを開催した。その結果,危険度情報を市民社会が受け入れ,適切な防災行動に結びつけるためには,危険度情報の提示だけでは限界があり,過去の被災状況などをつぶさに読み取ることができる災害エスノグラフィーによってもたらされる災害の追体験感と災害プロセスの理解が同時に必要であることが明らかとなった。
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