配分額 *注記 |
7,870千円 (直接経費: 7,300千円、間接経費: 570千円)
2007年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2006年度: 2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
2005年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
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研究概要 |
中国文学における詩跡の概念と形成は、日本文学における空想の文学地誌・歌枕よりも、現実の見聞に基づく俳枕に近い。ただ詩跡中にも空想・未見の所産が若干存在しており、後起の俳枕が歌枕・謡曲・軍記・芭蕉等によって形成・展開していった諸相は、詞曲や小説等を取り込む詩跡の展開に示唆を与える。 南の江蘇・安徽省、北の山東・陝西省を実地調査して、詩跡の再建や現状、風土的特色に関する新しい知見を得た。たとえば、鎮江市では王昌齢の詩にちなむ芙蓉楼が、本来の場所とは異なる金山公園内に造られており、揚州市では大明寺の境内に九層の棲霊塔が再建されて観光産業に役立っていた。 研究成果を収めた報告書のなかには、1,詩跡を著録する文献的価値を解明しつつ、詩跡の全体像と詩跡認識の広がりを考察した論文。2,実地調査した安徽省の詩跡の研究。3,詩跡の概念が明確化する南宋期の地方志を調査して、詩跡的観点の形成と普及の様相を考察した論文。3,池州市(安徽省)の2つの詩跡形成(斉山と杏花村)を通してみた、作品の継承性と現実の詩跡の様相が示すギャップの考察。4,「瘴」字の用法を通して見た、南方意識の変遷研究。5,文化景観としての詩跡の位相論。6,平安時代の物語文学に見える詩跡の様相を考察した論文。7,一種の詩跡辞典-竹内実編著『岩波 漢詩紀行辞典』が内包する諸種の問題点の考察。今後、詩跡研究の総合化を図る『中国詩跡事典』の制作を目指していきたい。
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