研究課題/領域番号 |
17330044
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
経済学説・経済思想
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研究機関 | 九州産業大学 |
研究代表者 |
岡村 東洋光 九州産業大学, 経済学部, 教授 (50108627)
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研究分担者 |
山本 通 神奈川大学, 経済学部, 教授 (20102220)
高田 実 九州国際大学, 経済学部, 教授 (70216662)
光永 雅明 神戸市外国語大学, 外国額研究所, 准教授 (20229743)
金澤 周作 川村学園女子大学, 文学部, 准教授 (70337757)
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研究期間 (年度) |
2005 – 2007
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研究課題ステータス |
完了 (2007年度)
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配分額 *注記 |
7,390千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 390千円)
2007年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2006年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
2005年度: 3,900千円 (直接経費: 3,900千円)
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キーワード | フィランスロピー / 相互扶助 / セーフティネット / 社会福祉 / 社会史 / 経済史(社会史) |
研究概要 |
下記のような内容の最終的な研究報告書を作成した。 序章(岡村):研究経過と概要。第1章(金澤)「慈善信託法(1853年)の長い制定過程---チャリティにみるイギリスの自由と規律---」では、1853年の慈善信託法案の成立過程を調べた。法案は慈善信託の不健全経営の見直しと大法官裁判所の非効率性の解消を目的としていた。その結果、司法手続きの簡素化と行政的には消極的監督の権限しか持たない常設のチャリティ委員会の設置に帰結した。この方策でもって、慈善信託は息を吹返し、社会的弱者への自発的な支援機構が存続することになった。これは、弱者救済のためのセーフティネットの見直しでもあった。第2章(光永)「フィランスロピ活動と王室---ミース卿によるオープン・スペースの整備を題材に」では、上流階級のフィランスロピーをミースのオープン・スペース論を題材として論じ、それが労働者らの身体的な健康増進を目指しつつ、開園に王族を招待することで、王室判断をかわす狙いを持っていたが、総体として受け身の姿勢が見られた。 第3章(岡村)「5%フィランスロピー活動の意義と限界---ウォーターロウと工業階級住宅改良首都協会を中心に」では、「5%フィランスロピー」方式は5%の利益を得るから伝統的なチャリティとは異なる。だが、世俗的な資本家をフィランスロピー活動に引き入れることを可能にした。こうした仕組みこそ、新興の資産家たちに「相応しい」形式があった。 第4章(山本)「英国の住宅問題におけるフィランスロピーと国家福祉-B・シーボーム・ラウントリーの活動を中心に」では、シーボーム・ラウントリーの住宅問題への関わりを中心に検証した。第二次世界大戦中には住宅問題が基本的には解決したものとみなしたこと、そして彼の姿勢は社会学的考察に裏打ちされた、ボランタリーなフィランスロピストとしての立場だったことを明らかにした。 第5章(高田)「全国預金友愛組合と老齢年金---第一次大戦前イギリスにおける相互扶助の変質と国家福祉の登場」では、NDFS(全国預金友愛組合)を事例に、これは個々人の預金最大化を最優先として運営された組織で、若者中心の組合であった。その上で、個人化の進行によって共同意識が空洞化するとともに、多様な相互扶助組織は国家福祉との協働の道を選択していった過程を明らかにした。 終章(岡村)では、以上の研究を集約し、フィランスロピー活動の歴史的な、また、現代的な意義について次のように纏めた。イギリス社会が、上流階級を中心とする伝統的なチャリティの他、新興のミドル・クラスによる固有のフィランスロピー、そして労働者階級による相互扶助という、多様で重層的な構造を持ったセーフティネットによって支えられた社会であること。また、(広義の)フィランスロピーは、単なる過去の歴史的な遺物ではなく、現在においても機能しており、さらには未来社会のあり方について有意義な示唆を含む仕組みである。 (裏面に続く)
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