研究概要 |
本研究の目的は,自己の身体仮想化実現に向け,自己の身体認識に関わる視覚,触覚,自己受容感覚の役割を「運動」と「記憶」に焦点を当て明らかにすることである.自己の身体を仮想的に作り出す技術は,未だ開発されておらず,実現可能かさえ明らかになっていない.そこで、錯誤的な身体情報下で,その後の自己の運動および身体に関わる記憶がどのように変化するかを調査することで,身体仮想化技術の開発に大きく貢献できると考え,研究を実施し,以下の結果を得た. 具体的には、(1)自己の手の鏡像を視覚的に与へたり、(2)両手の指を交差させた姿勢を取らせることで、指への触覚刺激方向弁別や触刺激部位の同定が困難になることが明らかとなった。(3)また、指交差姿勢を取らせた状態での触刺激同定課題では、視覚的身体情報として自己の手、他人の手の写真、手の線画を呈示する場合で、同定の誤りの出現頻度が異なることが明らかとなった。特に興味深いことは、他人の手、線画等でも、触刺激がそれらに与えられる場合は同定の誤りがみられたことである。 これらの行動実験の結果を生む原因として、体制感覚的身体マップと視覚的身体マップの相互作用、または、視覚的身体情報と体制感覚情報の融合プロセスが考えられた.今後の課題は、それらの神経生理学的過程をfMRI等の非侵襲脳計測等を行うことにより明らかにすることである。 (4)平成19年度においては,(3)の行動実験において明らかになった課題遂行中の脳活動部位を明らかにし,遂行すべき課題と脳活動との対応を調べる実験を行った.現在,行動データの分析は完了し,これまでと同じ結果が得られたことを確認した.脳活動の分析は精力的に行っているところである.
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