配分額 *注記 |
16,600千円 (直接経費: 15,400千円、間接経費: 1,200千円)
2007年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2006年度: 4,100千円 (直接経費: 4,100千円)
2005年度: 7,300千円 (直接経費: 7,300千円)
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研究概要 |
単結晶基板上に作製されたナノ構造薄膜における局所的な磁性や電子スピン分極の探査と解明を目指して,新しい測定手段として発展中の放射光核共鳴散乱法(放射光メスバウアー分光法)の実験条件最適化を行うとともに,実験データの収集を推進した. 電子スピン分極のプローブ(探針)となる119Snあるいは57Fe核を含む薄膜試料に,プローブ核のメスバウアー遷移エネルギーにあわせた単色パルス放射光X線を入射し,核によって共鳴散乱されたX線の時間スペクトルを測定した.実験条件の最適化の結果,Feに関しては90%57Fe1原子層程度の厚さがあれば数時間の測定でS/N比の良い時間スペクトルが得られることが確認された. ナノスケールの厚さをもつCr層とその上に蒸着された57Fe単原子プローブ層の磁性を探る実験では,Cr層の下地に強磁性56Fe層がある試料とない試料で,またCr層の厚さに依存して,時間スペクトルに明確な違いが観測された.56Fe/Cr界面効果の影響を受けてCr層の磁性が変化し,57Feプローブが感じる内部磁場(電子スピン分極)の違いに反映されているものと考えられる. また,伝導電子が100%スピン分極した「ハーフメタル」の候補物質としてスピントロニクス分野で期待されているX_2YZ組成のL2_1型ホイスラー合金およびそのY,Zサイトを同一元素にしたB2型人工合金の局所磁性を探る実験を行った.原子層制御交互蒸着法を用いて作製されたCo_2MnSnホイスラー合金薄膜においては,局所磁性の乱れが少ない良好な薄膜試料の実現を反映し,美しい周期振動パターンをもった時間スペクトルが観測された.一方,CoSn人工合金薄膜では,室温・低温ともに比較的小さな内部磁場が誘起されていることが示唆された. 以上のように,放射光核共鳴散乱法をナノ構造薄膜に特有な磁性の探査に適用し,他の測定法では得難い情報を得ることに成功した.
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