研究課題
基盤研究(B)
水銀汚染物質が、1968年まで長期間にわたって化学工場から水俣湾へ排出された。その後、1977年から14年間にわたって25ppmをこえる水俣湾の海底汚染堆積物は浚渫され取り除かれた。本研究の目的は、水俣湾と袋湾から採取した海底表層堆積物(コア)に含まれる底生有孔虫と水銀の時空分布を把握し、水銀汚染が底生有孔虫群集に与えた影響や水銀汚染指標種を特定して今後の環境汚染に対する基礎的なデータを供することである。浚渫された水俣湾、浚渫されなかった袋湾とも、ほとんどのコアの下部でバックグラウンドの値を示した総水銀濃度が上位に向かって高くなり、上部でやや下がる傾向が認められた。7地点で調べたメチル水銀濃度もほぼ同じ傾向を示したが、浚渫されていない袋湾が水俣湾に比べて高い値を示した。また、表層堆積物の間隙水、海底直上水、底層水に含まれる総水銀濃度とメチル水銀濃度の分析結果から、海底ふきんの水銀濃度が高く、海底堆積物からの溶出が水中の水銀の起源であること、溶出の際にはメチル水銀が主要な化学形であることが示唆された。一方で、13地点から採取したコアの、それぞれの全層準271試料について粒度分析を行ない、水銀汚染前と後、浚渫後の粒度組成、その他の粒度分析結果に違いが認められなかったことから、底層流が極めて弱い(堆積物の75%以上を泥が占める)この海域の堆積環境が、水銀汚染前から現在までまったくと言ってよいほど変わらなかったことが明らかになった。底生有孔虫群集の解析から、南部八代海と同様に、Bulimina denudataのみが総水銀濃度が高い層準で産出頻度が高くなり、水銀汚染の指標となりうる可能性がさらに高まった。総水銀濃度の高い層準ほど底生有孔虫の総個体数が少ない傾向が認められたが、解析した層準が少ないために明確には言えない。今後、底生有孔虫群集解析を急がなければならない。
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