研究概要 |
始生代の堆積岩を用い、バイオマーカである窒素同位体組成を分析することにより原始地球の表層環境を探った。堆積岩に記録された窒素同位体から、原始地球の大気組成を始めとした環境情報を推定出来る可能性があるが、古い堆積岩中の窒素が具体的にどのような形で原始地球の情報を示し得るのか、という点は必ずしも明らかではなく、本研究においてその方法論を確立すべく、堆積岩中の様々な窒素同位体成分の捕獲相解明を進めた。本研究では、35億年前に堆積した西オーストラリア産チャート(Kitty's Gap、および、Marble Bar)、および、インドDhawar Cratonに産する27~29億年前の縞状鉄鉱床(BIF)試料を主に用いて研究を進めた。各試料から段階燃焼法によりN2,Ar, C, H_20などの揮発成分を抽出し、同位体・元素分析を行った。複数の揮発性成分の濃度・同位体組成情報を組み合わせることによって、これらの試料には3種類の異なる形態で窒素が捕獲されていることがわかった。Kitty's Gapチャートでは各試料中の窒素濃度は放射壊変起源の^<40>Arの濃度と良い相関を示し、窒素の大部分はKを含む粘土鉱物に捕獲されているのではないかと考えられる。窒素同位体組成(δ^<15>N)は-4‰から+10‰以上の広い範囲が見られたが、窒素の同位体組成と40Ar/N比には相関があり、粘土鉱物にはどうやら2つ以上の同位体組成の異なる窒素成分が捕獲されているらしいことがわかった。また、Marble Barチャートでは、δ^<15>N値が+6.0‰から+7.3‰程度の値を持つ窒素が炭素と良く相関しており、窒素はおそらくは有機物の形で含まれていることがわかった。さらに、このチャート中では窒素・炭素を含む有機物相が無機鉱物中に包含されるような形で含まれていることが示唆された。BIF中では、δ^<15>N値が10‰の窒素がC/N比が大きく異なる2種類の炭素質担体に含まれているらしいことが示唆された。
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