研究概要 |
カーボンナノチューブをはじめとする種々のナノ物質が様々の分野で注目されている。その作製手法は大気圧放電やレーザアブレーション法が主な方法であったが、最近開発された液中放電で作製する方法は,安価で大量生産が可能であるという特徴から注目されている。また、作製機構に関しては作製時の冷却過程(周囲温度)がナノ物質の性質や生成効率に重要な役割を持つことが明らかになった。しかしながら低温下におけるナノ物質形成機構は充分に調べられておらず,特に液温と形成物質の相関は充分わかっていない。 本研究では低温中,特に超流動状態の液体ヘリウム(超流動He:4K)やそれが気体化した低温気相ヘリウム(〜5K)中のアーク放電(液中放電)やレーザアブレーション(液中PLA)を用いて種々のカーボン系ナノ物質の生成を試みた。今回は,比較対象として純水中,およびエタノール中でカーボン系のナノ物質作製を試みた。その結果,以下のことが明らかになった。 (1)FE-SEMによる観測結果から,カーボンナノ構造物は純水、エタノールなどの室温中だけでなく、液体窒素や液体ヘリウムなどの低温溶液中放電および液中PLA法で作製できることが判った。 (2)周囲温度(溶液温度)が低いほど、同一条件で作製したときのナノ構造物(カーボンナノチューブ)の生成量(作製割合)が多いことがわかった。 (3)放電およびレーザアブレーション法を用いてナノチューブが作製される場合、液体の種類に関わらず発光スペクトル中にカーボン原子やカーボンイオンの発光がみられることがわかった。 (4)超流動He中で作製した場合には,ナノチューブだけでなくリング状のナノファイバーが存在することが判った。 (5)超流動He中で作製した場合には,液状化したと思われるようなカーボンナノ構造物が作製される事が判った。
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