研究概要 |
本研究では,周期微視構造体からなるマクロ構造物の非弾性解析を数学的均質化法に基づいて行うため,まず必要な基礎式を陰解法的に表示した後,非弾性構成式を線形化し,擾乱変位増分に関する境界値問題を導いた.次に,この境界値問題を反復的に解くためのアルゴリズム(ミクロ反復アルゴリズム)について述べるとともに,ミクロひずみ増分の反復初期値Δε^<(0)_<n+1>をマクロひずみ増分ΔE_<n+1>に等しくとると,本アルゴリズムはTerada-Kikuchi(2001)およびMiehe(2002)の反復方法となることを示した. つづいて,解析例として長方形状微視構造を有する円孔帯板の弾-塑性引張変形および弾-粘塑性引張変形を解析したところ,ミクロ反復の収束はΔε^<(0)_<n+1>のとり方に強く依存することがわかった.すなわち,Δε^<(0)_<n+1>を前ステップでの収束値Δε_nに等しくとった場合はミクロ反復はよく収束したが,Δε^<(0)_<n+1>=ΔE_<n+1>の場合は増分を大変小さくとっても収束条件が満足されなくなった.また,Δε^<(0)_<n+1>=0と設定することでミクロ反復初期時に通常の増分解析を挿入した場合は,増分をある程度小さくとる必要があった. 上述のように,本報の解析例では,ミクロ反復はΔε^<(0)_<n+1>=Δε_nとした場合に最もよく収束し,Δε^<(0)_<n+1>=0の場合にもかなりよく収束した.Δε^<(0)_<n+1>=Δε_nとした場合の良好な収束は,増分ステップ間のミクロ応力変化が比較的単調な問題で期待でき,本解析例はこのような問題であったと考えられる.また,Δε^<(0)_<n+1>=0の場合のかなりよい収束は,前進オイラー法に基づく増分問題を解いてΔε_<n+1>の最初の近似値Δε^<(1)_<n+1>を求めていることによるから,本解析例に限らず一般に期待できると考えられる.
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