研究概要 |
本研究ではSi-O-N膜の酸素バリア性,透明性と成膜条件(膜厚,反応ガス流量比,ターゲット電流値など)の関係を検討し,さらにSi-O-N膜と透明導電膜であるIZO膜との積層化を行った際の光学的,電気的特性の変化について検討を行った. その結果,Si-O-Nの成膜では,酸素透過度が膜厚30nm,ターゲット電流値0.5Aで極小値を取ることがわかった.また,窒素とアルゴンのガス流量比が大きいほど可視光透過度が向上するが,流量比N_2/(N_2+Ar)=0.10を境にして酸素バリア性が急速に悪化することがわかった.また,試験片ごとの酸素バリア性のばらつきは,成膜直前の真空チャンバ内壁の状態に強い影響を受けることがわかった.成膜作業ごとにチャンバ内壁の研磨を行うことで,酸素バリア性のばらつきを昨年度の3cc/m^2・day・atm程度から,0.5cc/m^2・day・atm以内に改善することができた.また,窒素ガス流量比0.04で行うことで,0.88cc/m^2・day・atmの昨年を上回る酸素バリア性を得ることができた. 上記で得られたバリア性に優れたSi-O-N膜上にIZO膜を積層し,IZOの電気的特性に及ぼす積層化の影響について調べた.その結果,積層膜の導電性はIZO単層膜よりも悪化することが明らかになった.これは,Si-O-N成膜後では真空チャンバー内の残留酸素およびチャンバー内壁への吸着酸素が多く,Si-O-N/IZO界面では酸素が過多となっているためである.このような酸素は,IZOの導電性をもたらす酸素空孔の形成を阻害する要因となる.短時間でこのような残留酸素等の影響を抑制するため,IZO成膜の初期段階では酸素を外部から導入せずに成膜を行った.その結果,単層膜と同等の導電性を確保することができた.
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