研究概要 |
ガラスの検査基板における微細流路は,現在,フッ酸を用いた化学エッチングによって加工されている.しかし,この加工法ではマスク製造や廃液処理のために,納期およびコストの面で多くの問題を抱えている.このような背景に対して,本研究では微細流路の加工を目的として,ポールエンドミルによるガラスのマイクロ切削加工技術を開発し,以下の成果を得た. (1)微細切削加工機の設計と製作:ガラスの切削加工において良好な加工面を得るためには,ポールエンドミルを傾けなければならない.そこで任意形状の溝パターンを加工するために,工具の姿勢制御4軸と,被削材の駆動制御3軸からなる微細切削加工機を製作した.また開発した加工機の実用性を目的として,ビットマップによる二次元的な加工パターンの定義とこれに基づく制御方式を開発し,二、三の加工事例によりその妥当性を確認した. (2)切削試験と加工面評価:ガラスの切削試験を実施し,切削条件や工具形状と,切削力および仕上げ面粗さとの関係を明らかにした.傾斜したボールエンドミルによる切削過程を解析し,工具姿勢が,脆性損傷,仕上げ面プロファイル,工具の温度上昇と摩耗に及ぼす影響を明らかにした. (3)実用化:対象とする加工法では,軸方向に大きな切込みが与えられるものの,送り速度は一つの切れ刃が一回の回転で除去する切削厚さに相当するため,十分に小さくとらなければならず,生産性が低い.そこで逃げ角のない8枚の切れ刃を有する微小径ポールエンドミルを開発し,脆性損傷なくガラスを切削するための最大送り速度を向上させた.その結果,送り速度は従来のボールエンドミルに対して10倍程度の速さで加工でき,工具寿命もこれに応じて延びることを明らかにした.なお,加工面の評価に対しては,エンドミルの加工痕による親水性,撥水性の変化は小さく,カッターマークが検査機基板の試験精度に及ぼす影響が小さいことを確認した.
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