研究概要 |
本研究では,DNA解析に関連するDNA高分子のマイクロ流れ場での伸張・配向性の解明,DNA高分子分散系の機能性流体としての応用などを目的として,DNA高分子分散系の流れ場における分子の伸張性を中心に,その流動特性を系統的に検討した.また,高分子ダイナミクスにおける高分子のミクロ挙動のモデル化に対して有効なデータの供給も目的の一つとした. このような観点から,ミクロ流れ場での研究を中心的に進めた.まず,ミクロサイズの急縮小流路・L字型流路・T字型流路を用いて,蛍光染色したDNA高分子の直接観察を行い,複雑な流れ場におけるDNA高分子の変形挙動を明らかにした.そして,急縮小流路を用いた流れ場では,収縮したDNA高分子が急縮小部において伸張していくパターンを明らかにした.さらに,DNA高分子の伸展に対する効果としては,伸張流れ及びせん断流れ双方の効果が加えられたDNA高分子が,伸張流れのみの場合よりも大きく伸張することを解明した.また,L字型流路・T字型流路でのDNA高分子の伸張過程を比較検討し,伸張流動が強く現れるT字型流路の方が高分子の伸展効果が高いことを明らかにした.また,ミクロンオーダーのすきまで発生させたクエット流れ場でのDNA高分子の挙動を観察,検討し,そのスタートアップ流れおよび停止流れでのDNA高分子の変形挙動を明らかにした.特に,流動停止時のDNA高分子の緩和過程では,DNAの長さの指数的な変化を解明した. また,高分子溶液としてのマクロ的な物性もレオメータを用いて,力学的な手法と光学的な手法により測定し検討を加えた.そして,定常せん断流動場における流動複屈折の測定から,ずり速度の増加に伴う複屈折の増加と配向角の減少傾向を明らかにした.この複屈折特性はDNA高分子の固有複屈折性に起因するものであり,せん断流動と分子の平均的な伸張状態の関係が確認された.
|