研究概要 |
平板間に液晶を充填し電圧を印加すると,壁面近傍を除く液晶分子は重心まわりに回転し電場方向に再配向する.このとき流動が誘起されることを数値計算で見いだし,その後,可視化実験で流動の発生を確認した.この現象を応用すれば,従来の機構と全く異なるアクチュエータ,すなわち,機構が極めてシンプルであり,形状に関する制約を受けず,極小化が容易であって,数ボルト程度で駆動するアクチュエータの開発が可能である. 本研究では,まず,印加電圧,平板間隔,壁面での分子配向条件が発生速度,流量,壁面せん断応力に及ぼす影響を数値計算で調べた結果,以下の結論を得た. 1.ツイスト角が0°であれば誘起される速度は面内分布であるが,ツイスト角が0°以外では面外成分を有する.このようにツイスト角は誘起速度の形状にまで影響を及ぼす. 2.印加電圧が増加すると,壁面せん断応力,速度,流量は増加し,また応答性は向上する. 3.平板間隔の影響はかなり大きく,平板間隔が小さいほどその影響は顕著である. 4.チルト角の影響は比較的小さく,チルト角が増加すると応答性は若干向上する. 続いて,2枚の平行平板の片方(下部)を固定し,他方(上部)を平面方向に移動が可能な状態にして,矩形波電圧を連続的に印加する実験を行った.また,Leslie-Ericksen理論を用いて,平板運動の数値シミュレーションを実施した.得られた結果は以下の通りである. 5.電圧印加時と解放時では液晶分子の回転方向が逆になるので,上部平板は前進,後退を繰り返す.ただし,電圧印加時の方が液晶分子の回転速度は大きいので,平板は大きく前進し小さく後退し,結果的に前進する. 6.本実験では,平板の移動速度は周波数が100Hzのとき最大値90μm/sとなった. 7.数値計算では平板は階段状に前進し,実験結果と定性的に一致した.ただし,平板間隔を一定に保つための微粒子と平板との摩擦のため,移動速度は計算結果の方が大きい.
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