研究概要 |
本研究は,高温・高圧下における高濃度水蒸気を含む低酸素予混合気の乱流燃焼メカニズムを解明し,燃焼ガス再循環を用いた新しい高負荷燃焼方式への応用展開を図ることを目的として企画された.再循環物質は燃焼生成物質であるから,水蒸気,二酸化炭素,窒素であり,特に,水蒸気と二酸化炭素両者の効果を明らかにする研究を段階的に行った.具体的には,燃焼ガスを模擬した水蒸気および二酸化炭素により希釈された高温空気を酸化剤に用い,乱流および層流予混合火炎に対し各種レーザー計測を併用して乱流火炎構造および燃焼速度の計測を行った. 初年度は,二酸化炭素で希釈したメタン・空気乱流予混合火炎の特性を,乱流燃焼速度や平均火炎領域体積によって調べる実験と平行して,新たに,高温空気に水蒸気を連続的に供給する装置を設計・製作した.4本のロッドヒータが挿入された銅製円筒内にステンレススチールウールを詰めた熱交換器を製作し,マスフローコントローラにより水を連続的に供給して熱交換と蒸発を起こさせた.これにより広い水流量範囲で安定に水蒸気を発生させることに成功した.さらに,供給水蒸気が過熱蒸気である場合と湿り蒸気である場合に火炎発光の違いとPLIFおよびPTV計測への影響を明らかにした. 第2年度は,モル分率10%まで空気を水蒸気で希釈した高温酸化剤に対する大気圧および高圧下での燃焼実験を本格的に行った-高温高圧乱流火炎のレーザー計測では,OH-PLIF計測を行い,各水蒸気添加条件に対して,500枚の画像を用いて反応進行変数を求め,それを基に乱流燃焼速度等の導出を行い,二酸化炭素希釈乱流予混合火炎との結果と比較を行って燃焼ガス再循環型ガスタービン燃焼器の特性を予測する基礎データを取得した.乱流燃焼実験と共に,PLIF計測とPTV同時使用した水蒸気希釈環境下の層流燃焼速度測定も行った.その結果,既存の詳細反応モデルによる数値解析結果と比較すると,特に過濃側で実験結果による燃焼速度が数値計算結果を上回り,燃料改質反応が生じることが原因となっている可能性を示した.また,数値解析において過濃燃焼条件下でCO濃度が低下し,排出ガスに対する水蒸気添加効果が表れた.
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