研究概要 |
光触媒の一種である酸化チタン(TiO2)は,紫外線による光分解反応で環境浄化を行なう有用な物質として,最近非常に注目を浴びている物質である.本研究では,溶射により金属表面に酸化チタンのコーティングを実施し,大面積,高耐久性の酸化チタン被覆伝熱面の開発を試みた.具体的には溶射によるコーティングで作成した表面を用いて,以下に示す4種の実験を行った. 1)プール沸騰実験では,超親水性伝熱面における熱伝達係数や限界熱流束が通常面より高い値を示した.2)流下液膜式蒸発実験では,伝熱面を超親水性にすることで熱伝達率を最大40倍に増大させることができた.3)浸漬冷却(焼き入れ)実験では,超親水性のサンプルでは,膜沸騰から核沸騰への遷移が高温で生じ,結果として冷却時間が大幅に短縮された.4)液滴の蒸発実験では超親水性伝熱面の場合は低温域で蒸発時間が大幅に短縮された.また,濡れ限界温度が上昇した. プール沸騰実験 溶射被膜表面を用いて,プール沸騰実験を行った.比較のために,スパッタした伝熱面,鏡面仕上げした伝熱面を用いた. ・限界熱流束は,鏡面仕上げ面に比べ溶射面No.2(STS-01)は1.5倍高くなっているが,高熱流束域では,熱伝達係数は低下している. ・高熱流束域では,溶射被膜の厚さが大きく影響する. 流下液膜蒸発実験 流体による直接加熱の実験1,実験2,および電気ヒータによる間接加熱の実験3において,溶射管,スパッタ管,鏡面仕上げ管を用いた実験より次のことがわかった. ・実験1(低温領域)では,溶射管がもっとも熱伝達が良好である. ・実験2(高温領域)では,溶射被膜の厚さが伝熱に大きく影響することがわかった. ・実験3(高温領域)より,被膜表面の構造が伝熱に大きく影響することがわかった.
|