研究概要 |
抄紙機や印刷機のような種々の接触回転系において,パターン形成現象がしばしば発生する.研究代表者らは,パターン形成現象の最も支配的な発生原因は線形時間遅れ系の不安定振動であるとみなし研究を行ってきた.その結果,多くのパターン形成現象が上記のメカニズムで説明可能であることが明らかになった.本研究では,実用的で取り扱いが容易なパターン形成現象の防止対策の確立を目指して下記に示す研究を行った. 1.新しい安定判別法の開発およびその基本概念の明確化 (1)基本的な例として2自由度系および3自由度系を対象に,安定・不安定境界の存在条件に基づく新しい安定判別法を開発した. (2)新しい安定判別法の特長を利用したパターン形成現象の発生しにくい構造設計法を定式化した. 2.新しい安定判別法を適用したパターン形成現象に対する動吸振器の最適設計法の確立 (1)1自由度系に対しては,不安定度が最も高くなる最悪条件を想定した上で安定化を行う方法を定式化した.この結果,系の特性を完全に同定する必要のない最適設計法を確立した. (2)多自由度系に対しては,複数個の動吸振器が必要でありその個数や設置位置をも含めた最適化を行うため,モード毎に動吸振器を個別に設計する方法を提案し大幅な設計時間の短縮と各モードに対する効果的な安定化を実現した. 3.実験的検証 時間遅れ系に対する安定判別法の有効性を検証するために,抄紙機等で利用されている粘弾性ロールをモデル化した直列型多段ロール系の実験装置を製作した.主に1自由度系を対象とした実験を行った結果,新しい安定判別法の結果と一致する範囲で振動が発生しこの安定判別法の有効性が確認できた.この実験装置は最大4自由度まで変更可能であり,本研究で得られた結果を基礎にして,今後は動吸振器によるパターン形成現象に対する防止法の有効性について検証を進める.
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