研究概要 |
本研究は,イオン衝撃二次電子銃により発生させるパルス電子ビームを,揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds,以下VOC)の分解処理技術へ適用し,電子ビームによる物質分解に関する基礎データを蓄積すると共に汎用化学物質処理装置としての実用化を目指して実施した。 平成17年度は,衝撃二次電子銃の性能向上と最適化,VOCの導入法および分解生成物の分析法について検討を行った。VOC分解処理に最適な電子ビームを発生させるために,高電圧電源装置の開発・改良を行った。また,陰極電圧,繰返し周波数をパラメータとして,イオン衝撃二次電子銃で発生させた電子ビームの特性を明らかにした。また,気体処理室に到達する電子ビームのエネルギー分布,エネルギー損失を計測した。VOC分解処理実験のためのガス導入系を構築し,分解性能の評価のためにガスクロマトグラフ装置およびガスクロマトグラフ質量分析装置を導入した。 平成18年度には,VOCを含むサンプルガスの分解処理実験を実施し,処理効率の計測,分解プロセスの解明,分解生成物の分析を行った。分解実験に先立って二次電子銃の基本特性の測定を実施し,電子窓を透過する電子ビーム量は加速電圧100kVで飽和し,その際の最大到達侵入長は約80mmであることを確認した。また,現状のガス処理室内において,ガス分解に必要なエネルギーが得られていることを確認した。分解実験は,濃度218ppmのベンゼンおよび104ppmのトリクロロエチレンをサンプルガスとして実施した。電子銃の加速電圧を100kV,照射回数を1000回とした時,ベンゼンで約60%,トリクロロエチレンで約70%の分解率を達成した。 以上より,2kHzの繰り返し運転で約3L/sのベンゼンを処理できる見通しが得られ,本装置が小規模な処理施設における高効率VOC分解装置として実用化可能であることを示した。
|