研究課題
基盤研究(B)
次世代光通信の技術革新に貢献すると考えられる,周囲温度により発振波長が変動しない波長多重通信用半導体レーザ創製に向けての研究を行った。すべてMBE成長したGaNAsBi活性層、GaAsクラッド層のダブルヘテロ構造でダイオードを作製し、電流注入によるレーザ発振実現の試みを行った。確立したアニール技術を適用し、このダイオードのスペクトルをエレクトロルミネセンス(EL)測定により確認したところ,100Kから300Kの温度範囲で,ELスペクトルピーク波長の温度依存性は0.09nm/Kであった。これは,活性層材料に従来的に用いられているInGaAsPFPレーザの発振波長温度依存性が0.4nm/Kであるのに対し,1/4程度に低減されている。この結果、この材料・構造のダイオードで目的とする「発振波長が温度に無依存な特性を持つ半導体レーザ実現」が可能であり、その一歩手前まで来ていることを示すことが出来た。しかし、成長温度が少し上がったり、(III)/V比がふらつく等の現象がMBE装置に起こると、波長の温度無依存な発光特性を示す成長層を得られなかった。また、さらに結晶性を改善するためランプアニールの温度を上げたり時間を長くしたりすると、同様に波長の温度無依存な発光特性を示す成長層を得られなかった。これらは、目的とするGaNAsBi層の成長条件が極めてクリティカルであることを示しており、この再現性確保には、セル間の熱的な干渉を最小限にし、また、背圧を改善できる液体窒素シュラウドをもつ最新のMBE装置が必要との感触を持った。
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