研究概要 |
フォトニック結晶ファイバは,その強い導波路分散によって,零分散波長を,シリカの材料分散が零となる1.3μm帯よりもはるかに短い波長帯にシフトさせることができ,可視光領域での新規な非線形光学の創成が期待される。零分散波長を可視域にシフトさせるには,フォトニック結晶ファイバのクラッド部に存在する空孔の直径や空孔の間隔,また,空孔リング数を適切に調整すればよいが,同時に多モード動作してしまうことが懸念される。本研究では,フォトニック結晶ファイバのベクトル有限要素法に基づく解析ソフトウェアを開発するとともに,零分散波長,カットオフ波長,閉じ込め損失の空孔直径,空孔間隔,空孔リング数など,フォトニック結晶ファイバの構造パラメータ依存性を詳細に調査し,単一モード動作条件下で最短の零分散波長を与える構造パラメータを特定することに成功した。また,ベクトル有限要素法に遺伝的アルゴリズムを導入したフォトニック結晶ファイバの最適設計理論を新たに開発し,この最適設計法を用いて,分散補償フォトニック結晶ファイバラマン増幅器の最適構造パラメータを探索した。その結果,CバンドやSバンドにおいて負の分散値と負の分散スロープを呈する広帯域分散補償フォトニック結晶ファイバラマン増幅器の利得平坦化が可能であることを明らかにした。さらに,最小許容曲げ半径を有する場合と有しない場合の空孔付加型ファイバのラマン利得係数と群速度分散を測定し,測定結果が理論値と良く一致することを確認した。
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