研究概要 |
本研究では,電磁気的制約条件が強いMRI,原子力施設,化学プラント等でも使用可能な音響入出力デバイス(光マイクロホン,光イヤホン)の開発を目的とした。 光マイクロホンは音圧感知部のダイヤフラムとその上を通る直線光導波路からなる。本研究では,感度向上を狙いつつ,共振周波数をできるだけ高くすることを念頭に置き,位相感度と共振周波数の目標値をそれぞれ2.5mrad/kPa,3.4kHzとした。理論計算を基にダイヤフラムサイズを20mm×20mm×0.15mmと設計して,ガラス基板光導波型マイクロホンの試作を行った。試作マイクロホンの位相感度(測定値)は1.3mrad/kPaで,設計値の半分程度にとどまったが,我々のグループが行った先行研究に比べ,11倍の感度向上を達成した。さらに雑音低減を施し,周波数1kHz,音圧2Pa(100dB-SPL)の音波の検出に成功した。また,ダイヤフラムサイズ20mm×20mm×0.15mmのガラス基板光導波型マイクロホンを3個試作し,周波数特性を調べた。共振周波数はそれぞれ2.7,3.3,3.7kHz付近にあり,理論値とほぼ一致した。 平成18年度からは,基板にシリコンを利用した光導波型マイクロホンの研究も並行して行った。シリコンは微細可能性に優れており,光マイクロホンの小型・軽量化が可能となる。研究当初は,ダイヤフラムの残留熱応力や導波路の高い伝搬損失が原因となって,感度,出力光強度,消光比が共に低く,最小検出可能音圧が100dB-SPLにとどまった。そこで,低温プロセスを導入し,さらに光導波路の作製プロセスを見直したところ,出力光強度の増加,消光比の改善が見られ,マイクロホン感度が約10倍向上した。その結果,ダイヤフラムサイズ10mm×10mm×40μmの試作マイクロホンで,80dB-SPLの音波(1kHz)を検出することに成功した。さらに,周波数特性を測定したところ,ダイヤフラムの共振が5.3kHzに現れ,理論値5.6kHzとほぼ同じ値が得られた。
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