研究概要 |
まず,千葉大学医学部に設置された死体撮影用のCT装置に対して,データの外部出力のためのインタフェースを設置し,画像データベースを作成した.次に,骨折が死因の特定に重要であることを考慮し,頭部と胸部の骨を対象とした骨折検出アルゴリズムの開発・評価を行った. 1.頭部 頭部は,正常例では左右対称性が高いことに注目して,まず,頭部の左右対称面を抽出し,次に,左右で差分を求めて左右差を強調した画像を作成した.さらに,固有画像法を用いたモデル化を行い,その結果に基づいて骨折部位を検出する手法を提案・評価した. 2.胸部 胸部に関しては以下の処理手順を持つシステム開発した. a)骨領域の抽出 b)骨の解剖学的分類(第一胸椎など,解剖学的名称の付与) c)骨折部位の特定 a)の骨領域の抽出処理では,二値化などの単純な方法以外に,様々なテクスチャ特徴に注目した詳細な処理を提案した.初年度に開発した画像データベースに適用して性能を評価したところ,提案した処理によってどの症例からもほぼ安定して骨領域が抽出できることが確認できた.次に,b)の解剖学的分類については,隣接する骨同土が接する部位に両者を分割する目的で分割点と呼ぶ点を配置し,その分割点の分布の統計モデルを構築した.また,そのモデルを用いた骨の解剖学的分類手法を提案した.データペースを用いた評価実験では,7割強の骨の画素に対して正しく解剖学的名称が付与できていたが,まだ骨同士が接する部位を中心に問題が残されていることが分かった.最後のc)については,分類された骨ごとに,骨表面の連続性に注目して骨折を検出するアルゴリズムを開発した.実際の画像を用いて評価したところ7割程度の検出精度であり,拾いすぎも同時に幾つか検出されることが知られたが,当初の目的は達成できた.
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